角川つばさ文庫

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つばさちゃんと本のたび

角川つばさ小説賞

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角川つばさ文庫小説賞 第2回発表

第2回角川つばさ文庫小説賞〈一般部門〉は、最終候補作4作品の中から、選考委員のあいはらひろゆき先生、宗田理先生、本上まなみ先生による議論の結果、下記の作品が大賞と金賞に選ばれました。選評は3月15日に掲載します。

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つばさ文庫小説賞 一般部門 受賞作品

こちらパーティー編集部〜ひよっこ編集者と黒王子〜深海(ふかみ)ゆずは

ストーリー
 白石ゆのは中学1年生。漫画家の母につれられ、2年間、世界をとびまわっていたが、ようやく地元にもどってきた。ゆのには「新しい中学で『雑誌』を作る!」という大きな野望があった。しかし、協力してくれるはずだった、おさななじみの旺司(通称・黒王子)は、すでに新聞部に所属中。転校初日のあいさつでも、クラスメートたちはドン引き。なのに、「今月行われる文化祭に創刊号を出します!」と宣言してしまい…!?
プロフィール
深海(ふかみ)ゆずは。女性。いて座のB型。会社員。
趣味は旅行と食べ歩き。ごはんはいつもおかわりします。
好きな言葉は「想像力より高く飛べる鳥はいない」「まよったときは前に出ろ」。
受賞のことば
 このたびは身にあまる賞を拝受し、身が引きしまる思いです。選考委員のあいはら先生、宗田先生、本上先生、おいそがしい中、本当にありがとうございました。また編集の皆様をはじめ、今回のきせきにかかわってくださったすべての方々に、心よりお礼もうしあげます。
 受賞の連絡をいただいた際、「私の人生にとんでもないことが起きてしまった」とよろこび以上の恐怖がせりあがってきました。勉強は大の苦手。テストはすぐに小さくたたんでかくすような子でしたし、とっぴょうしもないイタズラをしてよくしかられておりました。
 お小言(こごと)とは友達ですが、賞とは無縁(むえん)の人生。ただ体力と努力だけなら……と意地になってもらったのは皆勤賞(かいきんしょう)くらいです。そんな私が大好きなつばさ文庫でまさかの「大賞」。それは人生で一番ほこらしい金メダルです。
 たくしていただいた賞の大きさと重みをかみしめ、選考委員の諸先生のように長く愛される作家を目指し、精進(しょうじん)してまいります。本当にありがとうございました。

ミコトバヅカイ、参るでござる!あさばみゆき

ストーリー
 直毘桃(なおび もも)は、漢字マニアの中学1年生。ある日、桃の前に「忍矢(しだり)」と名のる忍者が現れ、「直毘の姫として、ミコトバヅカイのお役目をはたせ」とせまる。直毘家は代々「ミコトバヅカイ(御言葉遣い)」として、悪しき「マガゴトヅカイ(禍言遣い)」に対抗し、正義を守ってきた血筋だというのだ! 拒否する桃だが、両親やクラスメートのリオにも魔の手が…。しかたなく、ミコトバヅカイに伝わる筆「桃花(とうか)」をとる桃だが!?
プロフィール
あさばみゆき。女性。おひつじ座のB型。横浜在住のフリーライター。
妖怪やお化け、占いの話には興味しんしん。苦手なのは部屋のそうじ。
うずたかく積まれた本にかこまれて暮らしたい。
受賞のことば
 はじめまして! このたびはつばさ文庫小説賞の金賞という、すばらしい賞をいただきまして、とてもビックリしています。審査員の先生方、たずさわられた皆さま、ありがとうございました!
 賞をいただいた作品は、「漢字」のふしぎな力で悪者と戦うお話です。でも実は私、主人公の「桃」と同じ中学生のころは、漢字テストで毎回落第。先生からウチに電話がかかってきて怒られちゃうくらいだったんです。でもこのお話が頭の中にふってきて、いざ漢字のことを調べてみたら、思いもよらない意味があったり、かくされた物語があったり。漢字ってスゴくおもしろいんだって知りました。そんな感動を、お話を通してぜひ読者のみなさんと分かちあえたらなと思っています。
 今回、「お話を作る人になりたい」という子どものころからの夢をかなえる、とても大きなチャンスをいただきました。読者のみなさんがドキドキワクワクせずにいられないお話を届けられるように、精一杯がんばります! どうぞよろしくお願いします!

【受賞作品は、2014年秋ごろ、角川つばさ文庫より刊行を予定しています。】

選考委員選評

あいはらひろゆき

プロフィール
作家。著書に「くまのがっこう」「がんばれ!ルルロロ」「クローバーフレンズ」など。
選評
 今年は昨年にも増して実力作品が揃いました。それぞれに特徴があり、読んでいても、つい引き込まれてしまう、そんな魅力的な作品ばかりでした。
 まず、大賞の「こちらパーティー編集部」。雑誌作りという目標に明るく、かつエネルギッシュに挑戦していく主人公がとてもチャーミングで、フレッシュな若者像を見事に作り上げていたと思います。編集部の仲間や天才漫画家(?)トウマ先輩など脇のキャラクターも皆魅力的で、ストレートな物語に抑揚をつけていたと思います。何より、とても読みやすく、スピーディな文体は若い読者層にとっては感覚的にとてもよくマッチするもので、次々とシリーズを読破していく姿が今からもう見えるようです。
 次に金賞の「ミコトバヅカイ、参るでござる!」。これは、個人的にはぼくの大好きな作品でした。漢字の一部を書き換えることで戦うという斬新なストーリー、その実際の漢字の変化がはっとした知的驚きに満ちていること、などユニークでかつ緻密な構成はレベルの高い読者まで唸らせる力があります。大賞作品がフレッシュな王道だとすると、こちらはこだわり派の秀作と言え、もしこの作品が刊行されるようなら、つばさ文庫全体の幅をさらに広げるのではないかと思います。それから、惜しくも選に漏れた2作品。まず「御吉値銀行 好運支店」ですが、とにかく運を銀行に預けるという物語設定が実にすばらしい。その設定を聞いただけで、楽しいイメージが広がり、その後を読むのがとても楽しみになりました。だが、その後はこのすばらしい設定を十分に生かしきれず、魅力的な物語の組み立てに至らなかったようで、とても残念でした。最後に「落ち武者キューピット」ですが、バスケット部のメンバーたちの友情、ほのかな恋心、それを応援するキューピット……とさわやかで読みやすく好感の持てる話ですが、もう少し特徴や深み、読者を引きつけるパワーがあるとよかったのではないでしょうか。その点が惜しまれました。

宗田理(そうだ おさむ)

プロフィール
作家。代表作『ぼくらの七日間戦争』。「ぼくら」シリーズは角川つばさ文庫でも大人気。
選評
 「こちらパーティー編集部 〜ひよっこ編集者と黒王子〜」
 最終候補4作の中では一番よかった。「超おもしろい本を作る事」が夢の中学1年生、ゆのは、転校してきた初日、登校中に学校一の不良である赤松とケンカ。クラスでの自己紹介では、文化祭で雑誌を作って配る、といきなりみんなに宣言してしまう。ここまででも主人公の、少しおっちょこちょいだが、バイタリティーあふれるキャラクターがよくわかる。宣言はしたものの、雑誌作りは容易ではない。一緒に頑張ってくれる仲間が必要だ。ゆのが粘り強くスカウトするなどして、集まったメンバーたちが、皆、ひと癖もふた癖もあっておもしろい。占いオタクの編集部員、しおりの占いに導かれて、学園一のアイドル、2年生の青木に、雑誌の目玉としてのマンガを依頼するのだが、この男、調子はいいが、一筋縄ではいかない。あっさりもらえた原稿は、内容がめちゃめちゃ。書き直しを要求すると、青木は激怒。とはいえ、雑誌作りにこういう著者はつきもの。ここで諦めたら、原稿はとれない。さあ、どうするか? 編集者の腕の見せどころだ。ハラハラドキドキの連続の中、ついに創刊号を刊行してしまうのは感動的でもある。文章もリズムがあって読みやすい。ゆのには、第2号も作らせてみたい。今度は連載小説や先生のゴシップネタなども載せて……? 今後の展開をも、期待させる作品である。
 「ミコトバヅカイ、参るでござる!」
 漢字マニアの中学1年生、桃の前に江戸時代の忍者があらわれて、「ミコトバヅカイ」のお役目を果たせと迫る。「ミコトバヅカイ」とは、悪い言霊を正し、邪気を祓ってきた正義の一族だという。ふつうはなかなか考えつかない、漢字をモチーフにしたオリジナリティあふれる物語だが、これを最後までまとめあげた、作者の力量には感心した。ただし、忍者が登場する話はよくあるので、もっと別のキャラクターの方がよかったのかもしれない。「ミコトバツカイ」に対して、人間の発する悪い言霊を核としてバケモノを生み出す鬼の一族、「マガゴトヅカイ」がいるのだが、彼らは、札に漢字を書いて戦う。その発想はいい。しかし、決着のつき方など、難解な部分もある。わかりやすく読者に伝えるためには、構成に工夫が必要だろう。たとえば、力を封じられた忍者の忍矢が桃を助けに来て、「マガゴトヅカイ」に挑む場面。桃が自分の意志で「マガゴトヅカイ」を封印する、この作品のクライマックスだが、どうなっているのか、状況がわかりづらい。「出る杭は打たれる」をモットーとしていた、引っこみ思案の主人公の、成長の跡がみてとれるラストはよかった。
 「御吉値銀行 好運支店」
 生まれてこの方、常に小さな不運につきまとわれている小学5年生の幸希が、母の田舎へ行った時に突如招かれたのが、「御吉値銀行 好運支店」。お金ではなく運を管理するという、この銀行や、運の遺産相続、「持ち運を使い切ると死んでしまう」などの設定は非常にユニークで、読みはじめた時は、どんな物語が展開していくのか期待した。だが、結果的にはアイディア倒れになってしまった感じがする。行員のキツネ、キチジに預運管理をしてもらっているのに、主人公の運のバラマキが止まらない、といったあたりまではおもしろいが、いじめっ子を罰するためにわざといじめられる紫穂子や、ダンプ事故のエピソード、頭取のキャラクター、オチも含めて、悪くはないけれど、もっと考えてみてもよかったのではないか。アイディアはとてもいいので、このまま捨ててしまっては惜しい。あらためてストーリーを作り直せば、きっとおもしろいものになるだろう。
 「落ち武者キューピット」
 腕相撲が男子より強い女の子が主人公ということで、彼女の周りでどんなことが起こっていくのか興味を持ったが、転校を前にキューピットの矢で仲直りさせるなどの展開は、安易で意外性もなく、先が読めてしまうので、読み手を惹きつけない。一言で言うとストーリーの弱さか。「落ち武者キューピット」というのなら、キャラクターをもっと魅力的でひねりをきかせたものにしないと、読んでいて退屈になる。一考を要する。

本上(ほんじょう)まなみ

プロフィール
女優、タレントとして活躍するほか、エッセイや絵本などの著作も多数。
選評
 読者対象がローティーン、という難しいしばりの中で、4作とも非凡な舞台設定、また豊かなビジュアルの広がりもたたえ、「どう面白がらせようか!」という並々ならぬ意欲を感じました。頼もしく嬉しく読むことができました。
 「こちらパーティー編集部」は、マンガ的な文体がいいテンポを創り出し成功している作品。まわし蹴りが得意というヒロインの直情径行っぷりに加え、漫画家の母親やその編集担当、ハンサムな幼なじみ、色男の先輩等々、彼女を支える周囲のキャラクターが魅力的です。"校内雑誌"という小道具で、シリーズ化という未来も見えますね。スクープ、グラビア、広告……などさらに具体的に作り上げると楽しいと思います。
 「御吉値銀行 好運支店」は、自分の運を他人のために使うお人好し男子のお話で、だから全体に立ち昇る優しさに惹かれた一編です。意外な美少女キャラもいいし、口の悪い大阪弁のチビギツネも極めて憎らしく愛らしい。ただ、肝心の"運使い"という状況がちょっと把握しづらかったのが残念です。
 「ミコトバヅカイ、参るでござる!」は、漢字の達人少女が筆を手にマガゴトと戦うという設定がとてもよかった。襲いかかるカラス、バケモノとなった友人など、怖いシーン、ドキドキが最もある作品。作者の力量を感じました。でももっともっと漢字の"書き換えの技"でアクロバティックに遊んでほしかったです(「烏」+「賊」=烏賊、いいですね!)。
 「落ち武者キューピット」は、背の高い、腕相撲の強い女子という主人公像が面白く、魅力的です。転校していく男友達のためにサプライズパーティーを仕組んだ教室での時間のうつろいが胸きゅん感覚を誘う、最も恋心のある作品でした。キューピットの3本の矢が次々外れて主人公は自力で解決するしかない、という展開は二重丸です。ただ、助っ人天使が"落ち武者"で果たして正解だったのかな? とも。既にそういうコメディ映画もあることですし。

■一般部門 3次選考通過作品■

2次選考通過作品

■一般部門 2次選考通過作品■

2次選考通過作品

■一般部門 1次選考通過作品■

1次選考通過作品1次選考通過作品